日本は降雨の多い地域だが,これまで降雨中・直後の生態系CO2/H2Oフラックスを直接測定するのは困難であり,未解明の部分が多かった.本研究では,滋賀県南部の桐生水文試験地ヒノキ林において,エンクローズドパス型分析計を用いた渦相関法により生態系CO2/H2Oフラックス,及び各種気象条件,樹液流速を測定した.従来のオープンパス型,クローズドパス型CO2/H2O分析計による測定結果と比較したところ,エンクローズドパス型が降雨中・直後のCO2/H2Oフラックス測定に最も適していた.エンクローズドパス型分析計を用いた観測の結果,降雨中・直後のH2Oフラックスに関しては,飽差の増大につれて放出が増大し,無降雨時と比べて大きな放出の値が観測された.この間は樹液流速の上昇が伴わなかったことから,遮断蒸発がおこっていたと考えられる.さらに強い日射が続くと,樹液流速が増大したことから,H2Oフラックスの成分が遮断蒸発から蒸散へ移り変わったと考えられた. 一方でCO2フラックスは,降雨中・直後も無降雨時と同じように日射の増大に応じて森林生態系への吸収の増大が観測された.