対照流域実験法から,簡易架線集材と小面積皆伐を組み合わせた森林整備が流域からの浮遊土砂流出と流出流量に与える影響を検証した.試験流域は神奈川県相模原市の相模川水系に位置する貝沢試験地で行い,森林整備流域(6.65 ha)と対照流域(8.53 ha)を設定した.植生はスギ・ヒノキ人工林で,一部がコナラ2次林となっている.森林整備は,20 m× 20 mの小面積皆伐を5か所で行い,流域全体では択伐を行い,本数間伐率は17 %であった.森林整備に当たっては試験流域内で重機を用いず,材の搬出は簡易架線集材とし,新たな作業道の作設は行わず,渓流の保全に留意した.森林整備後,森林整備流域からの流出量の増加が認められ,その量は年間降水量を1,800 mmとすると,100 mmの流出量の増加であった.流出量の増加のうち,直接流出の増加が40 mm,基底流出の増加が60 mm と推定された.森林整備後には浮遊土砂量の増加が認められず,本試験で行った森林整備法では浮遊土砂流出の増加を伴わないことが示された.