水文・水資源学会誌
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研究ノート
マルチトレーサーを用いた仙台市沿岸域の地下水の水質特性と季節変化の把握
藪崎 志穂山本 怜南柴崎 直明
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2022 年 35 巻 3 号 p. 192-201

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抄録

 仙台市宮城野区新浜地域の地下水等の水質の特徴やその季節変化を把握するため,2018年12月から,水路1地点,地下水6地点(浅層地下水1地点,深層地下水5地点)で毎月調査を実施した.水質組成は,水路はNa-Cl型,浅層地下水は(Na+Ca)-HCO3型を示すが,共に溶存成分量は時期により変化しており,降水イベントの影響を受けていると思われる.一方,深層地下水はいずれの地点も時期による変化は殆ど認められずほぼ一定しており,溶存成分量は浅層地下水と比べて多い.沿岸に近いS-3ではNa-(Cl+HCO3)型を示し,またNa+とCl-濃度が他の深層地下水の地点よりも高いため,海塩混入による影響が及んでいると考えられる.その他の深層地下水の水質組成はNa-HCO3型で,相対的に滞留時間が長い水質の特徴を有している.δ18Oおよびδ2Hは,S-3では他の深層地下水よりも相対的に低い値を示しており,この結果はS-3の涵養標高は他の地点よりも高い可能性を示唆している.深層地下水4地点について,CFCs濃度を分析した結果,滞留時間の推定値はおよそ70年であることを把握できた.

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© 2022 Japan Society of Hydrology and Water Resources
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