論文ID: 37.1817
局所慣性方程式は,効率よく洪水氾濫解析を実行できる基礎方程式として2010年頃に提案されて以来,数多くの数値モデルに使われている.著者らは,局所慣性方程式がなぜ高い数値安定性を有するのか,また,その安定性条件はどのように決定されるのかについて,数学的解析とモデル実装の両面から研究に取り組んできた.本稿は,約10年間に渡り取り組んできた一連の研究をレビューし,拡散波方程式との比較,摩擦項の離散化手法による安定性への影響,安定性と精度を両立する離散化手法の提案,という3つの視点で成果を整理する.数理解析の概要を説明するとともに,局所慣性方程式をモデルに実装するユーザー視点での要点をまとめることを目的とする.さらに,水文・水資源学会の研究グループ発足といった原著論文では記すことが難しい共同研究進展の契機についても,時系列で振り返って研究ノートの形で記録する.