水文・水資源学会誌
Online ISSN : 1349-2853
Print ISSN : 0915-1389
ISSN-L : 0915-1389
地表面熱収支に及ぼす地中伝熱量の評価と影響
児島 正洋佐渡 公明中尾 隆志
著者情報
ジャーナル フリー

1999 年 12 巻 6 号 p. 492-501

詳細
抄録

地中伝熱量が地表面熱収支に及ぼす影響に関する詳細な研究はこれまでほとんど行われていない.本研究では,まず北見工業大学内にある寒地気象観測露場(以下,露場と呼ぶ)における実測データを用いて地温および地中伝熱量の実用的計算法について検討した.この実用的計算法は,土壌熱特性値を近似的に一定と扱えるz-t平面の半無限場において,比較的簡単な初期条件と境界条件のもとに熱伝導方程式の解析解を求めることに特徴がある.その結果,境界条件と初期条件を実測値に基づいて与えた場合,地温の計算値は地表面境界条件より初期条件の影響を強く受け,深さ方向に一定の値を与えた場合より,3次式を用いた方が計算精度が良かった.一方,地中伝熱量の計算値は地表面境界条件の影響を強く受け,区分的一定より区分的線形とする方が計算精度が高かった.次に,地中伝熱量の影響の程度を表す指標として伝導対流比を提案した.露場における1時間平均熱収支において,地中伝熱量の影響は日の出,日の入り付近で無視できる場合があった.さらに,地被状態の違いによる顕熱・潜熱輸送量および地中伝熱量への配分割合の違いについて文献調査を行い,三角座標を用いて表し,平均化時間が日単位あるいはそれ以上の場合に必ずしも地中伝熱量の影響が小さくなるとは言えないことを示した.

著者関連情報
© 水文・水資源学会
前の記事 次の記事
feedback
Top