抄録
低平沖積農地は,これまでしばしば汚水の停滞,降雨,河川氾濫などの諸要因による手ひどい水質や排水問題を被ってきた.本研究は,主に小規模排水処理システムの稼働後の時間経過において,家庭雑排水質の変化が排水路水質に与える変化を調査した結果である.調査地は,岐阜県高須輪中の平田町に設けた.輪中は,堤防で囲まれた農業地域である.平田町には有名な観光地であるお千代保稲荷があり,多数の観光客による汚濁負荷が顕著である.よって,これら家庭雑排水による汚濁負荷の増減の実状を明確にするため,排水路網における流入・流出状況を加味しつつ,調査地内の排水路に13測定ポイントを設置し,各月毎に諸水質パラメータに関わる汚濁負荷を測定した.その結果,集落からの汚濁負荷が多い場合には処理施設の効果で年々減少する傾向を示し,今後供用率が高まればさらに排水路水質が改善されていくと思われた.しかし,当該地域の末端排水路の水質は過去5年間で改善がみられず,今後は総合的な改善への努力が必要と考えられた.