抄録
京都府北部大江山地方の蛇紋岩,花崗岩,古生層頁岩地域で各地質ごとの基底流量の空間変化を4月下旬と8月下旬に調査した.その結果,蛇紋岩地域では最も空間変化が大きく,比流量の大きな流域が存在する一方で,流出のみられない流域も多数存在した.これに対し,花崗岩地域および古生層頁岩地域では,どの支流も比較的比流量の値が一定でばらつきが小さい結果となった.また,季節変化は蛇紋岩地域で最も大きく,8月にはすべての流域において基底流量が著しく減少した.一方,花崗岩地域では季節変化が小さく,基底流量の値はほとんど変化しなかった.古生層頁岩地域の季節変化は,中間型であった.基底流量と観測地点(本流河川との合流地点)の高度の関係をみると,花崗岩と古生層頁岩地域ではほとんど相関がみられないが,蛇紋岩地域のデータによると基底流量と高度に負の相関がみられた.このことは蛇紋岩山地において基盤岩の地下水面が大きく季節変動していることを示唆する.