2019 年 7 巻 2 号 p. 69-74
頸部膿瘍の原因には扁桃炎を含む上気道炎,歯性感染などが挙げられる.化膿性胸鎖関節炎は主に整形外科で取り扱われる疾患であるが,頸部膿瘍の原因となった2症例を我々は経験した.症例1は69歳女性,当科受診3週間前から左前胸部に腫脹が出現し,CTで左胸鎖関節を中心とし,胸骨裏から上縦隔にかけて膿瘍形成を認めた.入院後,全身麻酔下に頸部膿瘍切開排膿術・気管切開術を施行した.術後再度前胸部が腫脹し,左鎖骨・胸骨の骨髄炎が頸部膿瘍の原因と考えられ,搔爬処置を検討していたが本人は固辞された.術後30日目に局所麻酔下に前頸部切開したが明らかな感染兆候はなく,術後50日目に退院となった.症例2は73歳女性,当科受診1週間前から胸骨右縁周辺の痛みが出現し,前医のCTで右頸部膿瘍・縦隔膿瘍の診断で当科紹介となった.入院の上,呼吸器外科と全身麻酔下に頸部膿瘍切開排膿術・縦隔膿瘍切開排膿術を施行した.術後経過は良好で術後32日目に退院となった.化膿性胸鎖関節炎は耳鼻咽喉科の日常診療で遭遇することはほとんどないが,頸部膿瘍の原因となりうることを知る必要がある.また,胸鎖関節周囲に膿瘍形成を認めたときは,速やかに画像評価を行い,炎症の程度に応じて鎖骨掻爬や縦隔膿瘍の加療について他科と連携し診療にあたることが重要と考えられた.