2019 年 7 巻 2 号 p. 92-95
症例は33歳,女性.発熱,咽頭痛,頭痛が数日間持続し,上咽頭や口蓋扁桃,舌扁桃に白苔とアフタを認め,炎症反応が高値であったため,急性咽頭炎の診断で当科に入院した.sulbactam/ampicillinを投与し局所所見は改善を認めたが,頭痛の増悪を認めた.頭部CTでは異常所見を認めず,神経学的異常も認めなかった.腰椎穿刺で無菌性髄膜炎が疑われ神経内科に転科した.ヘルペス感染の可能性を考え,acyclovirを投与し,頭痛,咽頭所見はともにすみやかに改善した.髄液PCR検査ではHSV,VZVはともに陰性であった.無菌性髄膜炎は神経学的異常を認めにくく,頭痛はほぼ必発であるが非特異的な症状のみを呈することが多い.診断には腰椎穿刺を必要とするが,実施されず見逃されることがしばしばある.本症例のように急性咽頭炎の経過中に激しい頭痛が増悪,持続する場合には,無菌性髄膜炎の可能性も考慮すべきと考えられた.