水資源の少ないエチオピアでは,水資源の有効な確保が喫緊の課題であり,建設コストが低く農民にも容易に施工できる洪水灌漑(SI)の技術が,近年重要な工法として注目されつつある。コミュニティ(集落)主体の小規模SI施設の管理は,受益農家が代表者数名を選出しすべての堰・水路を管理している。彼らは,施設の建設・維持管理,水資源の配分,規則違反者に対する科料徴収の役割を担っているが,洪水に付随する大量の土砂の制御が大きな課題である。一方,中央(地方)政府が担う大規模SIプロジェクトは,その管理も政府に依存しており,農民の中には,コミュニティの伝統的役割を無視しているとする不満が多く見られた。