本研究は,これまで提案してきた新たな用水の反復利用分析方式である昇順方式を用いて,実際の水田における用水需要実態が,用水の反復利用にどの程度反映しているかを分析した。手取川扇状地七ヶ用水地区を対象として,実測流量と面積比例させた取水量を与えて昇順方式により算定した推定流量とがどのような関係にあるかを実測流量資料の得られている8本の幹線水路について比較した。両者の間に大きな不一致は見られなかったが,正の相関は確認できなかった。この理由は,都市化などによる用水利用の変化が,過去に設定された水利権水量と整合しないことや,都市用水の流入など農業用水のみでは用水の需要実態が十分説明できないためではないかと推定された。