本報では,東京電力福島第一原子力発電所の事故に伴う被災地立地する水路システムに発生する堆積物と含まれる放射性Csの状況を概観しつつ今後の課題を考察する。幹線から支線までを含む1つの水路システムを対象として,空間線量率や堆積物の発生量,堆積物に含まれる放射性物質の分布の定量化を試みた。その結果,水路勾配が比較的大きい幹線水路上流では,余水吐などの掘込み部にのみ顕著な堆砂がみられ,その放射性Cs濃度は数千Bq kg−1と比較的低かったが,勾配が緩やかな下流水路では,1万Bq kg−1を超える比較的高い放射性Csを含む泥状物の堆積が卓越した。今後,勾配が緩く泥状物の堆積が主体を成す水路などで,水路除染後の再堆積を含めて影響を見極める必要がある。