農業用ダムの主要な役割は,下流受益地の各時期の水需要に応じた農業用水の供給であり,放流量の季節変化が一般的に大きい。他方で,水力発電を行う立場からは,一般に放流量および落差を極力一定に保つことで効率の良い発電ができる。したがって,灌漑水供給のための水管理と効率的な水力発電のための水管理の方針は,相反する場合がある。本報は,農業用ダムにおいて,これら2つの相反する目的を調整し,小水力発電の効率化を目的とする水管理の手法を提示し,事例分析を行った。その結果,とくに非灌漑期に極力定常的な放流・発電を行うことによって,設備利用率の向上や単位発電量当たり建設費の削減が可能であると考えられた。