利根川の利根大堰地点の全窒素は,1953年は低かったが,エネルギー源が石油に替わってから農業用水水質基準よりも高い。本報では,国,県で公開された河川水質,酸性雨のデータをもとに,利根川上流域における全窒素,窒素流出負荷量の経年変化を検討した結果,京浜工業地帯・首都圏で排出された窒素酸化物が夏の海からの湿潤な南風で運ばれ,前橋,安中,中之条の山地域で起きる地形性上昇気流による雷雨で降水沈着すること,近年,前橋,加須での年窒素沈着量の漸減に対応してダム流域の流出負荷量も漸減しているが,岩本,利根大堰の全窒素は変化していないこと,窒素沈着量の多い市町村の森林域では,年間の蓄積増量が大きいことなどを明らかにした。