宮崎県北西部の5町村は高千穂郷・椎葉山地域としてその地域に根付く山間地農林業複合システムが評価され,2015年に世界農業遺産に認定された。本報ではそれら農業用水路の受益水田の標高分布,および敷設地周辺の傾斜角を解析して,地形的特徴を検討した。加えて文献調査により他地域の水路と比較しながら本地域の農業用水路の存在意義を考察した。その上で本地域の農業用水路を「水田灌漑水の供給を主目的とした農業用水路で,地形上の制約により区間の多くが山の斜面上に敷設された多面的機能を有す開水路」とし,その呼称を新たに山腹用水路と呼ぶことを提案した。