農業農村工学会誌
Online ISSN : 1884-7196
Print ISSN : 1882-2770
87 巻, 3 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 小酒井 徹
    2019 年 87 巻 3 号 p. 179-182,a1
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    豊川用水事業は大正10年に愛知県東三河出身の政治家,近藤寿市郎がインドネシアの先進的な灌漑施設を視察した際にその構想を得たことに始まる。戦前は農林省が計画を発表するも着工には至らず,戦後の昭和24年に着工となる。事業着工後,天竜川からの分水など水源を増強しつつ農業用水受益を拡大し,都市用水をも供給する事業となり昭和43年に完成した。以後50年間この地域を水で支えてきたが,一方で通水後に急増した水需要に対処するため豊川総合用水事業を実施して水源を増強し,老朽化に対処するため豊川用水施設緊急改築事業を実施しダム・頭首工などを機能回復した。現在は豊川用水二期事業により水路施設の老朽化対策と大規模地震対策を進め,用水の安定供給と水利用の高度化を図っている。本報は小特集の冒頭の報文としてこの豊川用水のあゆみを紹介する。

  • 有野 治
    2019 年 87 巻 3 号 p. 183-186,a1
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    現在(独)水資源機構が管理する豊川用水は,昭和24年に農林省が建設に着手し,その後愛知用水公団に引き継がれ,昭和43年に完成した。当時は計画設計基準などの記述が詳細ではなかった部分もあり,豊川用水一期事業では農林省がそれまでに他の事業で蓄積してきた技術に加え,先行した愛知用水事業において米国から導入された技術も活用された。さらに,海外の技術動向に敏感に反応し,国内では先進的な技術も米国から導入された。近年では新たに大規模な開水路システムを構築することが減っているが,本報では昭和時代中盤に豊川用水が構築された際に採用された水源開発および建設技術を振り返り,特徴的なものについて報告する。

  • 吉久 寧, 山本 政彦
    2019 年 87 巻 3 号 p. 187-190,a2
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    豊川用水二期事業の実施により,豊川用水の大野系幹線水路は既設の幹線水路(開水路)と新設する併設水路(管水路)との「複合型水路システム」となる。部分的ではあるが二期事業の実施により併設水路が整備された幹線水路では複合型水路として複線化が図られ,これまで管理上の課題であった不断水での保守点検や改築補強工事,地区内調整池への効率的な洪水導水,事故・震災時の非常時通水,幹線水路下流部での需要変動への対応が可能となった。平成30年12月時点における併設水路を利用した複合型水路の管理について報告する。

  • 岩本 巧, 新美 潤
    2019 年 87 巻 3 号 p. 191-194,a2
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    豊川用水の受益地域は,古くから水不足に苦しみ,干天続きになると飲み水すら足りなくなる地域であった。第二次世界大戦後,食糧増産と失業救済を目的として昭和24年に国営豊川農業水利事業として着工したが,国土総合開発法の一環として作成された天竜東三河地域総合開発計画の中で,本事業は都市用水を含む総合利水事業となり昭和43年に完成した。豊川用水の完成後,受益地である東三河地域と湖西地域は,豊川用水の通水によって飛躍的な発展を遂げ,農業は日本屈指の農業地帯となり,上水道の整備により人口は増加,さらに品質の高い工業生産が行われ,農産物や工業製品は世界に輸出されるようになった。豊川用水がもたらした地域の発展について,水利用の変遷と併せて報告する。

  • 赤尾 博史
    2019 年 87 巻 3 号 p. 195-198,a2
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    豊川用水では,管理施設における未利用再生可能エネルギーの有効利用を図るため,ダムや水路などへの小水力発電設備の設置を進めてきた。平成27年には,二川調節堰発電所および大島ダム発電所が運転を開始し,その後工事を進めてきた宇連ダム発電所,駒場池流入工発電所が平成30年3月から運転を開始することとなり,現在では4カ所の小水力発電設備をもって総発電電力1,057kWを発電可能となった豊川用水の取組みについて紹介する。

  • 畔栁 英二, 服部 紘己, 外薗 友也
    2019 年 87 巻 3 号 p. 199-202,a2
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    豊川水系では,豊川用水が昭和43年6月1日に全面通水されてから平成30年で50周年となるため,受益地域のいたるところで水の大切さを思い起こす企画や,あらためて用水施設造成の偉業をたたえる催しが行われ,いずれも水源地域への感謝の念が再確認された。これらのイベント以前にも,豊川水系の受益市や豊川用水施設を受託管理している豊川総合用水土地改良区などがおのおのでさまざまな交流事業を実施しており,本報では,上下流交流の考え方を確認した後に,具体事例として豊川総合用水土地改区が行っている水源地域交流を紹介し,豊川水系の上下流交流の今後を展望していく。

  • 細山田 真, 篠原 亮二, 小林 淳, 立石 晶洋
    2019 年 87 巻 3 号 p. 203-206,a2
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    豊川用水は,開水路,トンネル,サイホンなどさまざまな工種で構成されている水路システムであるが,道路や水道と違ってネットワーク化されておらず,代替ルートを持たないため,耐震性を有しない山岳水路トンネルの存在は,利水者と地域にとって大きなリスクとなりうる。また,無筋コンクリート覆工の山岳水路トンネルは,大規模地震発生時にアーチ部に発生するひび割れが覆工を貫通し,最悪の場合,覆工コンクリートが通水断面内に落下して通水阻害となることが懸念されたことから,覆工コンクリートの荷重落下に耐えうる内面からの補強工法を選定し,施工性,経済性から,FRPグリッド補強工法を採用することとしている。本報では,FRPグリッド補強工法のはく離に対する抵抗性を実証試験により確認した結果を報告する。

  • 竹下 伸一, 北村 優衣
    2019 年 87 巻 3 号 p. 207-210,a2
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    宮崎県北西部の5町村は高千穂郷・椎葉山地域としてその地域に根付く山間地農林業複合システムが評価され,2015年に世界農業遺産に認定された。本報ではそれら農業用水路の受益水田の標高分布,および敷設地周辺の傾斜角を解析して,地形的特徴を検討した。加えて文献調査により他地域の水路と比較しながら本地域の農業用水路の存在意義を考察した。その上で本地域の農業用水路を「水田灌漑水の供給を主目的とした農業用水路で,地形上の制約により区間の多くが山の斜面上に敷設された多面的機能を有す開水路」とし,その呼称を新たに山腹用水路と呼ぶことを提案した。

  • 橋本 晃, 齋藤 晴美
    2019 年 87 巻 3 号 p. 211-216,a3
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    筆者らは,既報において(一財)日本水土総合研究所が独自に開発した「農家参加型水管理組織評価診断表」による調査結果を報告した。この成果を踏まえ,伝統的な水管理組織が存在するインドネシアのスバック地域およびタイのムアンファイ地域,ならびにスリランカの集団入植した地域において同様な調査を実施した。加えて,これらの地域では地域共同体の存在が参加型水管理の機能発揮によい影響を与えているのではないかと考え,新たに開発した「社会学的観点からの水管理組織診断表」によるアンケート調査も同時に行った。その結果,これらの地域の水管理組織は,地域共同体的な性格を持ちながら適切かつ合理的な水管理を行っており,共同体の結びつきが強いほど良好な水管理が行われていることがわかった。

  • 久野 格彦, 平松 研, 千家 正照, 千原 英司
    2019 年 87 巻 3 号 p. 217-219,a3
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    農業農村整備事業は,建設の時代から長寿命化と維持管理を目的とした事業へ変化している。また,農業自体も耕作面積の大規模化や生産人口の減少など大きく変化している。これに伴い,事業の基礎学を支えてきた大学の研究内容や組織自体も変化の中にある。東海農業土木事業協会では,この変化の時代の基礎研究分野を支える大学と,フィールドに最も近い部分に立つ事業協会の2つのシステム間で,可能な範囲での産学連携を模索する方向を打ち出し活動を開始した。ここでは,その活動の中で実施している,岐阜大学と三重大学の学生を対象に行った現地研修と,岐阜大学応用生物科学部と結んだ連携協定を示し,今後の産学連携のあり方の一つを紹介する。

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