昭和33年,鹿児島県大隅半島の肝属川左岸に広がる保水性の乏しいシラス台地にわが国最初の国営畑地かんがい事業「笠野原地区」が開始されてから約60年,肝属川右岸に広がる「肝属中部地区」においても,畑地への新規農業用水確保のため一級河川肝属川水系に荒瀬ダムを築造するとともに,ダムから地区内へ導水する幹線水路および支線水路を整備することにより,安定的な農業用水が確保され,単収の増加,高収益作物への転換,品質の向上および省力化による農業の生産性向上と農業経営の安定が図られることとなった。本報では,22年の歳月をかけて整備が進められてきた本事業の中で,①荒瀬ダムの設計・施工上の変更点,②ダムおよび用水路の水管理システム,③ダムによる水位差を利用した小水力発電,④ファームポンド管理用道路施工中の特殊土壌対策等について報告する。