わが国の大規模水田稲作地域では,配水管理は,江戸期の村(ムラ)を基礎単位とした重層的な水利組織が担う体制により行われてきた。ところが,ムラの範囲を超えて耕作する大規模経営体が増え,「ムラをベースとした水利組織とは別の組織の再構築が検討課題となる」と指摘されるようになった。そこで,本報では配水管理体制の見直しに向けた議論を進めるため,ムラを基礎単位とした体制が構築された経緯を整理・分析した上で,見直す際の主な留意点として,すべての水利用者が水利秩序の内容を共有し遵守する仕組みを整えること,用水の利用に際して水利用者(大規模経営体)が一つにまとまる必要がある仕組みを整えること,などを示した。