平成5年の暖候期は稀にみる異常な天候となった。大規模かつ長期間にわたる寒気の流入と日照不足は特に水稲に昭和55年冷害を大幅に上回る被害を与えた。寒気の流入は大気の蛇行に伴って極付近から南下したものであり, 大気一海洋間で起こっている異常現象がそれらを容易にした。やませも例年以上に吹走したが, 8月上旬の寒気は下層のやませと上層の一般風が一体となる稀な様相を見せた。このような異常天候, 特に低温と日照不足が水稲に被害を与えたが, 壊滅的被害を与えた原因は水稲側にもあった。それは北日本の水稲の生育が次第に遅れ, 最も低温に弱いとされる減数分裂期が8月上旬の低温に遭遇してしまったからである。深水管理で冷害をある程度回避できた事例はあるが, 異常な天候下でも成立する技術の構築の必要性も指摘されている。