農業農村整備事業は, これまで農業生産性や農村地域における生活環境レベルの向上に大きく貢献してきたが, これまでの設計思想に基づく機能性向上と生態系保全との間には, 相反する面が存在した。生物多様性の重要性が認識されつつある中で, 土地改良法の改正など, 農業農村整備事業における生態系保全への取組みは緒に就いたばかりであるが, 改めて生態系が疲弊することの意味に留意すべきである。
本報では, 生態系の脆弱化がリスクとして位置づけられることおよびリスク処理手段とミティゲーションの関連性を踏まえ, 農業農村整備事業における生態系保全対策の考え方について考察する。