水田で生活する水生昆虫の研究方法について, とくに基礎生態学の立場から, タガメ個体群のフィールド調査例を交えて解説した。水田に生息する昆虫種の多くは, 多様な水辺環境の時・空間的変動の中で子孫を残すべく生活している。現在彼らの生活史のほとんどは謎めいており, 今後地道な科学的な博物学的および個体群や群集レベルの調査研究が重要である。具体的なアプローチとしては, いきなり種の分布や個体数の多少を物理的, 化学的な要因 (たとえば, 水質や化学物質濃度) に還元して理解しようとせず, まず「分布しているか・していないか」「個体数は多いか・少ないか」の現象に関わるメタ個体群の移動分散や出生・死亡あるいは行動, 種間関係に着目する必要があるであろう。それは基礎生態学のbasi caproarchに他ならない。