抄録
都市部を除いた地域の産学官連携において主要なアクターとなるのは中小企業である.中小企業は相対的に人材・資金・情報源等のリソースに乏しく,産学官連携への参入に対して障壁を感じていることが明らかになっている.こうした障壁を解消し,中小企業の産学官連携を促進するためには,適切な支援制度の活用と支援機能の運用が求められる.本稿では中小企業を主な対象とした産学官連携支援制度として,(独)科学技術振興機構が過去に運用した「地域ニーズ即応型」を事例とした.制度の利活用状況に地域間で差があることに注目し,これを産学官連携に関わる地域内の諸要素の影響によると仮定し,重回帰分析を用いて検証した.その結果,地域の研究者増員,公設試等における外部資金受け入れ体制の整備,ファンディング機関による直接的なサポートが産学官連携支援制度の利活用を推進する可能性があることを示した.