抄録
産学連携は日本においても共同研究等の件数が大幅に伸びてきている.本稿では,大学が第2期,第3期の科学技術基本計画の重点推進4分野別にどのように研究資源を有しているかを明らかにした上で,産学連携がそれら4分野によりどのように異なるかを研究資源との関係も踏まえて明らかにする.共同研究や受託研究,大学発ベンチャーの全てにおいてライフサイエンスの分野が4分野の中で最も高い割合となっている.これは,研究費や特許出願についてもライフサイエンスの分野が4分野の中で最も高い割合となっていることが背景にある.ナノテクノロジー・材料分野は特許出願と研究費についてライフサイエンス分野に次ぐ高い割合を示し,共同研究や受託研究でライフサイエンス分野に次ぐ高い割合を示す.環境分野は研究費や特許出願で4分野中で最も低い割合であるが,受託研究と大学発ベンチャーでは3位と比較的高い割合を占める.研究費や特許出願で3位の割合を示す情報通信分野は大学発ベンチャーで2位と高い割合を示す.総じてこれら4分野は,大学における研究費というインプットの割合に比べて産学連携の役割が大きいことから,政策的に大学にこの4分野の研究費を供給して支援していくことは意味がある.特に,環境については,産学連携における割合は大学セクター内における割合に比べて大きいので支援していく必要がある.