抄録
大学等の高等教育研究機関と金融機関が連携し,地域の企業を支援し,あらたな事業の創出等に取り組む事例が増加している.この産学官連携に金融機関を加えた産学官金連携は,日本独自の地域イノベーションシステムとして注目される.しかし,その実態については,取り組み事例が多く紹介されるだけで,定量的な分析が可能な程度には明らかにされていない.
本稿は,産学連携学会学金連携システム研究会が2014年と2009年に実施した全国アンケート調査のデータ等をもとに,大学等と金融機関の連携関係の存在を社会的ネットワーク分析の手法を用いて分析した.
その結果,1)ネットワーク形成の過程で地域性が大きく影響していること,2)いくつかの中心性を有した機関が出現し,スター型のネットワークが形成されていること,3)複数の機関と複数の機関が同時に結びつくウェブ型のネットワーク形成には至っていないことが明らかとなった.これらの特徴をもとに全国の連携を類型化した.