抄録
本研究は,大学の産学連携活動と影響要因の関係を定量的に評価することを目的としている.産学連携活動に関するデータ,基礎研究や大学指標に関するデータを,収集し分析した.その結果,共同研究受入件数/教員数は影響の強い順に論文数/教員数,大学支出額/教員数,学部構成,産学連携実務担当者数/教員数,大学院学生数/教員数,共同研究受入額/教員数は論文数/教員数,大学院学生数/教員数,産学連携実務担当者数/教員数,学部構成,受託研究受入件数/教員数は高引用論文数/教員数,学部構成,産学連携実務担当者数/教員数,大学院学生数/教員数,受託研究受入額/教員数は高引用論文数/教員数,産学連携実務担当者数/教員数,奨学寄附金受入額/教員数は医学部,大学設置者,論文数/教員数,大学支出額/教員数が影響要因であることが明らかとなった.奨学寄附金受入額/教員数を除いて基礎研究を示す説明変数が被説明変数に最も強い影響を与えており,奨学寄附金受入額/教員数では医学部の有無が最も強く,基礎研究を示す説明変数は3番目に強い影響を与えるにとどまった.基礎研究を示す説明変数には,幾つかの大学指標を示す説明変数が影響を与えていることも明らかとなった.産学連携活動を促進するためには,基礎研究の強化が不可欠であり,それらに影響を与える大学指標の改善も期待される.