2020 年 16 巻 2 号 p. 2_69-2_76
教育課程において知的財産に関する良質な学習指導を行うには,学習者の状況や過去の学習経験が与える影響を理解したうえで効果的なカリキュラム開発や指導方法の検討が必要である.また,知的財産に関する学習内容は社会からのニーズや要請に配慮し学習活動の推進が求められる.本研究では,大学入学前までに知的財産の学習経験がある学習者が,大学時の知的財産学習において,どのように影響を与えるのかを計量的分析を用いて探索的に解明を試みた.さらに,大学時の知的財産学習の学習過程の影響についても対象とした.
本研究では,以下3点について解明を試みる.
1)学習者のこれまでの学校教育での知的財産に関する学習経験の有無が学習過程においてどのような影響を与えているのか
2)学習過程が学習意欲に対してどのような影響を与えているのか
3)学習過程が創作意欲に対してどのような影響を与えているのか
その結果,大学入学前までに知的財産に関わる学習を行っている学習者は,学習内容の理解に積極性があり,大学での学習を経験することで,将来的な学びの継続性や権利取得に興味関心があることが明らかになった.大学入学前までに知的財産に関わる学習経験がない学習者は,学習理解の態度のみに言及された.このことから,他の内容に関する学習と同様,学習レディネスの有無が,学習内容の理解を促し,深い学びに関係していることが示唆された.