産学連携学
Online ISSN : 1881-8706
Print ISSN : 1349-6913
ISSN-L : 1349-6913
特集 地方大学におけるTLOの現状と課題
広域TLOとしての(株)テクノネットワーク四国(四国TLO)
大山 真吾合谷 祥一
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 19 巻 1 号 p. 1_7-1_12

詳細
抄録

(株)テクノネットワーク四国(通称四国TLO,以後同じ)は広域TLOとして四国地域の大学の技術移転機関として活動している。一気通貫モデル,つまり発明発掘から実施許諾契約までを一人のアソシエイトが担当する形態で技術移転活動を行っている。技術移転収入は年々増加しており,専門人材を有していることが強みとなって,成果につながったと言える。一方で連携する大学毎に方針の違いもあり,大学の地域性や特色から一様な技術移転モデルでの対応からの転換を検討している。一気通貫モデルの利点は発明者にとっての相談相手が変わらないことから,信頼関係を築きやすい点で,そのモデルは変えない方が良いが,一方で技術移転プロセスは様々な専門技術を要求される多能工のような側面があるため,そのプロセスにおける専門家のサポートが必要である。そのように複数の専門家を揃える必要があるとするが,専門家の数が必要量(クリティカルマス)に達していない大学がほとんどであると考える。一気通貫プロセスにおけるTLOは発明に対して最初に目利きをする立場にあることが多く,既存企業への技術移転か,スタートアップかを判断し,リードする立場になる。そのため,起業支援も含めた視点で活動するべきであり,TLOの今後の発展において重要な視点だと考える。しかし,TLOとしてどこまで関わるのか,業務の棲み分けや橋渡しについてはまだ整理できていないのが現状だと考える。上述のような課題を認識しながら,四国TLOは地域の広域TLOとしてあるべき業態の模索を今後も続ける。

著者関連情報
© 2022 特定非営利活動法人 産学連携学会
前の記事 次の記事
feedback
Top