2022 年 19 巻 1 号 p. 1_13-1_20
株式会社新潟TLOは県内の大学等から生まれる知財の橋渡しを目的に,全国25番目の外部TLOとして,2001年12月に経済産業省(METI)の承認TLOとして設立された.最初の5年間は大型の技術移転や助成金申請支援などの事業において実績をあげた.その後は,経済産業省と文部科学省の方針の狭間で経営難に遭遇し,新潟TLO内での大幅な組織改革を実施した.組織改革と独自路線の模索の結果,現在は,技術移転の成果を活かした,世界トップクラスの水素センサーの独自開発事業とヒト由来の樹状細胞株(PMDC05)を世界各国の民間や公的研究機関に販売・提供を主事業とする運営を行っている.それに加えて,日本最初の革新的技術である,植物バイオ技術を活用した創薬の開発事業に取り組むベンチャー企業の設立にも寄与,それによりバイオ創薬事業で,雇用と経済の発展に貢献している.他方,大学の産学連携事業が主として共同研究に移行した.その結果,新潟TLOの技術移転できる原資が枯渇した状態が続いている.このことで,新潟TLOの当初の設置目的が大きく変化した.この大学の新しい方針による状況において,優れたイノベーションが育まれる研究環境の構築に向け,大きな夢を大学と共有し新潟大学との話し合いを粘り強く継続して行く.