抄録
職務発明の対価請求事件では司法判断は一貫して, 対価を構成する要素として使用者等が受けるべき利益や使用者等の貢献した程度といった要素分解をして各要素を決定し, これらを乗じることによって対価の額を算出する. これらの構成要素を判例から実証的に分析すると, 安定している要素とそうでない要素があることがわかる. 安定している要素のみで構成できる限定した条件下においては, 司法判断がどのような「相当の対価」を認定するのかは予測可能性が高いといえる. 判例上安定していない要素については予測性を妨げる問題点を指摘した.