2013 年 9 巻 2 号 p. 2_1-2_10
地域金融機関による企業の課題解決のための大学等を巻き込んだ活動が活発化している.このような産学金連携は,金融庁による地域密着型金融機能強化政策に端を発している.この地域密着型金融の推進が地域におけるイノベーションの創出という観点からどう評価されるのかについて考察する.そのため,政策のモチーフとなった学説上のリレーションシップバンキングと地域密着型金融の比較検証を行い,産学金連携が新たな地域イノベーションシステムとなる可能性を仮説として提示した.また,産学金連携の可能性検証の一つとして,産学連携学会の2012年秋季シンポジウムのパネルディスカッションにおいて行われた議論を振り返った.
その結果,1)地域密着型金融機能強化が政策的意図をもって学説上のリレーションシップバンキングと異なる内容で進められてきたこと,2)近時の地域金融機関の産学金連携の取り組みには自らの組織的意思による能動的なものが見られること,3)地域密着型金融が地域イノベーションシステムとしての可能性を期待させるものであることを明らかにした.