抄録
燃料電池には周辺環境に悪影響を与える重金属を用いた電極触媒が使用されている。本研究ではNi,Coを用いた燃料電池電極触媒のpHを変化させた溶出試験を行い,Ni,Coの溶出量を測定し,得られた溶出液の毒性を淡水性藻類 (Pseudokirchneriella subcapitata以下藻類) を用いて測定した。また,触媒に用いられるNi,Coの単体毒性試験を行い,溶出液中のNi,Coが藻類に与える毒性の強さ (TU) を算出した。
毒性試験の結果,pH5.0において溶出した溶出液では毒性の発現が確認された。溶出液中にはメラミンとホルムアルデヒドも含まれ,特にホルムアルデヒドは毒性に寄与していると推定された。また,毒性物質間の相互作用を検討した結果,毒性物質間で競合が生じ,毒性の低減が確認された。燃料電池電極触媒の毒性が確認され,毒性物質間に相互作用が働くため,機器分析だけでなく,生物を用いた毒性試験による環境影響の評価が必要であることが示唆された。