2013 年 24 巻 3 号 p. 53-62
都市ごみ焼却飛灰に含まれる鉛の不溶化のための無機系重金属不溶化剤として廃リン酸から合成したリン酸アルミニウム (WAP) が,鉛溶出抑制効果を有することを確認した。WAPには,鉛の溶出を抑制させるために必要なpH低下をもたらす効果を有し,次の3点を明らかにした。溶解したアルミニウム成分およびリン酸成分が飛灰中の消石灰や塩素と反応し,アパタイト化合物ならびにフリーデル氏塩を生成することで溶出液のpHを低下させた。溶解したリン酸アルミニウムのアルミニウム成分が水酸化物錯体を形成することでOH−を消費し,溶出液のpHを低下させた。リン酸成分による中和効果により飛灰のpH低下も確認された。加えて,溶解したリン酸成分が難溶性のアパタイト化合物もしくはリン酸鉛を生成することで,さらに鉛を不溶化していると考えられた。また,低pHでの鉛溶出試験においても,高い鉛溶出抑制効果が見られた。