わが国はリン需要のすべてを輸入に頼っており,将来的な資源セキュリティーおよび安定供給確保の観点から,廃棄物中のリンを効果的にリサイクルする技術開発は喫緊の課題となっている。本研究は,被膜化成処理工程において発生し,有効利用の進んでいないリン含有化成処理スラッジを,リチウムイオン電池の正極材にリサイクルする可能性について検討した。スラッジに含まれるリンおよび鉄を原料の一部として,正極材となるリン酸鉄リチウム (LiFePO4) を合成し,その結晶構造および電極特性を評価した。その結果,充放電可能なオリビン型 LiFePO4 の合成が可能であることを見出した。スラッジ含有量の増加に伴う充放電容量の低下が確認されたが,リン源の 25 % をスラッジで代替した正極材は,40 サイクルの充放電試験において放電容量 140 mAh g−1 以上を維持し,化成処理スラッジの正極材へのリサイクル実現の可能性を示唆した。