廃棄物焼却において性状の知見は重要であるが,医療機関等から排出される感染性廃棄物はその感染性から調査が困難であり知見が少ない。本論文では,感染性廃棄物の焼却施設 (産業廃棄物と混焼) について熱収支・物質収支を検討し,ここから感染性廃棄物の各種性状を推定した。廃棄物焼却による炉内発生熱量からピット廃棄物由来分等を差し引くことにより,感染性廃棄物 (湿重量あたり) の低位発熱量 28.3 MJ kg−1 が得られた。施設における物質収支,すなわち排出量 (排ガス・主飛灰経由) と流入量 (ピット廃棄物等由来,感染性廃棄物由来) から,感染性廃棄物中の塩素濃度 3.23 %,灰分 4.93 % が得られた。感染性廃棄物の密閉容器 (重量比 14.7 %) と内容物 (医療行為で発生した実際の廃棄物) を区別して検討した。滅菌後の感染性廃棄物 (内容物のみ) 試料について 14C 分析を行い,バイオマス度 14.2 %C が得られた。