2020 年 102 巻 1 号 p. 3-14
本研究は,根元事象の捉え方と,同様に確からしいことの意識化を視点として,多様なモデルの解釈・評価・比較に焦点を当てた確率の学習過程を構成するとともに,その過程における生徒の思考の具体的な様相を実践的に明らかにすることを目的とする.この目的を達成するために,まず,多様なモデルと比較に着目して数学的モデル化過程を捉えた上で,同様に確からしいことを意識せずに根元事象を多様に捉えて生徒がモデルをつくることと,より良いモデルを求めて洗練することを含めて確率の学習過程を具体化する.そして,その学習過程を反映させた授業を計画,実践,分析し,学習過程とその実現可能性を例証し,学習指導への示唆を導出する.分析から,2 つのモデルの解釈・評価・比較を通じて,同様に確からしいことを意識化し,一旦は根元事象の捉え方よりも同様に確からしいことを優先して既存の一方のモデルを評価していた生徒が,2 つのモデルを比較しながら解釈し直し,2 つのモデルを関連付けて新たなモデルをつくったことを明らかにした.