本稿の目的は,平成30年告示の高等学校学習指導要領の解説が示す算数・数学の学習過程のイメージ図において,現実の事象を数学化し解決を行う教材の開発を行うことである.そのために,書籍や気象庁のデータ等を基に「高潮」の仕組みや原因,実データに基づく潮位予測とその方法をまとめ,台風を想定した場合の潮位予測を行った.これらの教材研究を基にして,授業展開例を示した.「高潮」とは,台風等の気象的な要因の影響を受け,通常よりも潮位が高くなる現象である.本稿で扱う高潮に関する潮位の算出方法は,実際に気象庁が用いていたものであり,高等学校までの数学で処理が可能である.潮位の算出に影響する気象的な要因は主に気圧と風であるが,それぞれが潮位に与える影響は対象地域の地形や立地条件に大きく関わるためそれぞれの実情に応じた教材とすることが可能である.また,数学を地域の防災と関連づけることで,数学的な解決だけでなく,その結果から数学が身近な人命や生活を守ることに活かされていることを実感できる教材を目指した.