日本数学教育学会誌
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実践研究
「仮説検定の考え方」の学習指導に関する一考察
高校生の課題研究を文脈とする教材を用いて
小林 廉
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2022 年 104 巻 5 号 p. 16-25

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抄録

 本研究の目的は,「仮説検定の考え方」の創出を図るための教材と手立てを提案し,それらに対する生徒の実態の一端を明らかにすることを通して,「仮説検定の考え方」の創出を図る学習指導について示唆を得ることである.そのために,高校生の課題研究を文脈とする教材を用いた授業実践と,そこで観測事象だけでなくそれ以上に極端な事象が起こる確率を自力で求めた生徒へのインタビュー調査を実施した.主な成果として,次の2 点の示唆を得た.第1に,課題研究を文脈とする教材は,研究結果に疑いをかける「指導教員の問い」によって必要性を伴った批判的な考察を生じさせ,主張の妥当性について批判的に考察していこうとする態度への変容を促すことである.第2 に,観測事象だけでなくそれ以上に極端な事象が起こる確率を用いることには困難が生じるが,それができるためには,何を主張したいのかという目的意識が明確であり,その主張にとっての「より良い結果」を想定でき,それが偶然に起きては主張できなくなるという認識が必要になるということである.

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