2023 年 105 巻 3 号 p. 2-14
本研究の目的は,中学校数学科において,算数・数学の問題発見・解決の過程を重視した授業を設計し,その実践を通して,生徒が遂行した数学的活動の具体的様相を特定すること,及び実践上の留意点を導出することである.授業設計にあたっては,【現実の世界】の部分を含む過程(A1→B→C→D1)に着目し,とりわけA1及びD1の過程をより強調した授業を設計した.授業設計の方法論として,社会的オープンエンドな問題を採用し,授業実践「先生にエアコンをお薦めしよう」を設計した.実践の結果,生徒は数学を用いて問題解決することに加え,社会的文脈をも考慮に入れた意思決定を行うことができた.本研究で得られた授業実践上の留意点として,「A1の過程では,教師によって意図的に,子どもたちに現実場面を十分に意識させること」,「D1の過程では,それぞれの生徒が提出した社会的・数学的な解答を1つの解答に収束させるのではなく,複数の解答を共有すること」,以上の2点が重要であることが示唆された.