日本スポーツ栄養研究誌
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総説
アスリートの効率的な筋量増加にむけた運動と栄養摂取
藤田 聡
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2017 年 10 巻 1 号 p. 10-16

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抄録

 骨格筋はアスリートの筋パワー発揮に欠かせない臓器である。スポーツ競技におけるパフォーマンスを最大に高めるためにも、スキル練習と組みあわせたフィジカルトレーニングをつうじて、筋量を効率的に維持・増加させる方策は重要である。栄養摂取、特にたんぱく質は筋たんぱく質の合成を摂取後1〜2時間以内に増加させる。このたんぱく質摂取に伴う筋たんぱく質の同化作用は主に必須アミノ酸のロイシンによって引き起こされており、血中ロイシン濃度の増加に伴い、筋たんぱく質の合成速度も増加する。レジスタンス運動(筋トレ)も筋たんぱく質の合成速度を急激に増加させる介入手段である。レジスタンス運動に伴う筋たんぱく質合成速度の増加は主に力積(トレーニング時の総合的な負荷量)に依存して増加することが報告されている。つまり低強度の負荷重量で疲労困憊まで繰り返し挙上することで力積を増加させれば、高強度運動と同様の筋肥大を獲得することが可能である。レジスタンス運動と組みあわせる際のたんぱく質摂取においては、3つの注意点が挙げられる。1)たんぱく質の摂取タイミングについては、レジスタンス運動実施直後の摂取が最も効果的だが、運動実施から24時間後でも、有意な相乗効果は認められる。2)運動後のたんぱく質の摂取量については、筋たんぱく質の合成速度に対して量依存的な効果が認められるが、若年者では一回の摂取で約20〜25gの良質なたんぱく質の摂取で運動との相乗効果が最大となる。3)レジスタンス運動と組みあわせる際のたんぱく質摂取については、同じたんぱく質の含有量であってもその質(ロイシン含有量や消化吸収の違い)によって、運動後のたんぱく質合成速度が異なる。よって、効率的な筋肥大を目的とする運動と栄養摂取の組み合わせを検討する場合には、食事に含まれるたんぱく質の“質”も意識すべきである。

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© 2017 特定非営利活動法人 日本スポーツ栄養学会
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