2021 年 14 巻 1 号 p. 122-129
【目的】
陸上競技の十種競技は、2日間にわたって複数の競技を1時間から2時間おきに繰り返し競うことから、食事を摂るための十分な休息を確保することが難しく、スポーツ栄養学に基づいた工夫が必要である。そこで、日本陸上競技学生選手権の2日間帯同し、試合中の補食・水分補給、食事内容について提供や指導を行った。
【活動内容】
補食や食事によるエネルギー・各栄養素の目標量の設定には、あらかじめ、競技のタイムテーブルを基に、「日本人の食事摂取基準2015」、アメリカスポーツ医学会のガイドライン(ACSM)を参考として計算し、準備した。水分補給については当日の選手の体調と気候によって調整した。
【成果】
試合中のエネルギー・栄養素摂取量は、あらかじめ設定した栄養補給量を90%以上実食することができた。選手から内省報告として、パフォーマンスへの集中力も高まったことや自覚的な疲労感が軽減されたことが得られた。さらに、試合後の睡眠の質も改善された。結果的に、選手は自己ベストで優勝することができた。
【今後の課題】
十種競技の競技中のエネルギー消費量の推定は先行研究がほとんど存在せず、本サポートでも理論上の推定値と実際の消費量との差異について十分に検証できていない。今後、試合を想定した練習時にエネルギー消費量の測定を実施して、準備することや、試合会場に簡易に体重や疲労感をモニターできる測定器の導入を検討する必要がある。