日本スポーツ栄養研究誌
Online ISSN : 2759-6141
Print ISSN : 2188-8922
実践活動報告
陸上長距離選手の試合期における運動前のグルコースモニタリングの有用性─心理的な緊張による運動前のエネルギー不足(低血糖)が推測された選手1名の事例─
山﨑 香枝上田 啓輔三本木 千秋河端 恵子福田 志津可中田 由夫
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2022 年 15 巻 1 号 p. 86-90

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抄録

【目的】

 大学陸上長距離部門に所属する選手を対象に、①安全かつ効率よくトレーニングできるような食生活についての食育活動、栄養学的視点での助言を実施すること、②試合期において選手が自身の最大パフォーマンスを発揮できるように選手の個々の問題点を明らかにし、具体的な改善策を指導することを目的としてサポート活動を実施した。

【活動内容】

 身体組成および栄養摂取量を評価し、個人面談を実施する中で、選手1名から心理的な緊張によるエネルギー不足(低血糖)が推測される訴えがあった。この選手に対して、グルコースモニタリングシステムを用いてセンサーグルコース値(SG値)の測定を実施した。

【成果】

 練習時に70 mg/dLを下回るSG値が確認されたことから、練習/試合開始時のSG値を100 mg/dL程度に維持して、練習/試合に臨むように提案した。記録会当日は、スタート時間の6時間前に昼食を摂取し、試合1時間前に補食を摂取させたところ、SG値は100 mg/dL以上に保たれていた。記録会では10,000 mの自己記録を約1年ぶりに更新した(29分13秒51→29分7秒48)。

【今後の課題】

 センサーを装着するだけで手軽に測定できる機器を用いて、運動実施中の血糖動態を考慮し、個々人の特徴に合わせたパーソナルな栄養戦略の有用性を示していきたい。

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© 2022 特定非営利活動法人 日本スポーツ栄養学会
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