日本看護研究学会雑誌
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看護学生および看護婦の職業的アイデンティティの変化
波多野 梗子小野寺 杜紀
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1993 年 16 巻 4 号 p. 4_21-4_28

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抄録

 看護婦の職業的社会化を知るために,同一看護短大の看護学生および卒業生(看護婦)の看護職へのアイデンティティを調べた。
 まずそのために,看護学生,卒業生計936名を対象に,因子分析およびGood-Poor分析を用いて,12項目からなる簡便なアイデンティティ尺度を作成した。それを用いて,S県立看護短大の在学生228名(1年~3年,回収率98%)と昭和53年から13年間の卒業生442名(回収率65%)を対象に,看護職へのアイデンティティを測定した。その結果以下のことが明らかとなった。
1) 看護学校に入学後の1年生が最も高い。 2) 2年生で大きく低下する。しかし3年生は(卒業直前)再び高くなる。 3) 就職直後が全体のうちで最低である。 4) その後は徐々に高くなる。卒業生で就業,非就業,就業職種による違いはない。
 これらの結果は,看護職アイデンティティの発達は3つの特徴的な段階をとることが明らかとなった。すなわち,看護職の現実を知らないロマンチィックな職業への憧れの段階,現実を知って職業への失望の段階,そして看護職へのアイデンティティを確立し,安定する段階である。

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© 1993 一般社団法人 日本看護研究学会
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