日本看護研究学会雑誌
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抗癌剤投与時の脱毛予防に対する試み
-4%食塩水と消毒用エタノールを使用したアイスキャップの冷却効果と脱毛予防効果-
井上 貴美子岡崎 美晴後田 礼子藤井 奈都子濱田 準子山本 春美平田 雅子
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1996 年 19 巻 1 号 p. 1_69-1_82

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抄録

  本研究の目的は,4%アイスキャップ(4%食塩水9;エタノール1)を用いた頭部冷却法の有効性を明らかにすること,この頭部冷却法により抗癌剤投与時の脱毛を予防することである。この目的に沿って実験及び調査した結果,以下の結論を得た。
1.4%アイスキャップを用いた頭部冷却法は頭皮全体の皮膚温を低下させる。
2.頭部への血流の測定において,CCAから分枝したICAとECAでは,血流速度はECAの方が明らかに低下し,その時の顔面の皮膚温は変化しないことから,頭部冷却法は頭皮への血流量のみを選択的に減少させる。
3.頭部冷却により頭皮への血流量は減少し,それに伴って頭皮温も低下するが,バイタルサインには影響がなく,頭皮の損傷も見られなかった。
4.ADM及びFMBを使用する化学療法において,4%アイスキャップによる頭部冷却を行うことにより,単独投与であれば脱毛は100%予防できる,つまり,脱毛出現率は0%となる。多剤併用療法であってもADMでは86.6%,FMBでは62.5%脱毛を予防できた。
5.脱毛の程度を左右する因子としては,
  ① ADM,FMBの総投与量と投与方法
  ② 併用薬剤の種類と総投与量,及び投与方法
  による影響が大きいと思われる。

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© 1996 一般社団法人 日本看護研究学会
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