日本看護研究学会雑誌
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在宅健常高齢者の転倒に影響する身体的要因と心理的要因
江藤 真紀久保田 新
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キーワード: 転倒, 高齢者, 心身の要因
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2000 年 23 巻 4 号 p. 4_43-4_58

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抄録
  高齢者の転倒と主に身体的側面や心理的側面との関連性について,男性154名,女性162名,計316名の在宅健常高齢者を対象に,聞き取り調査および身体計測を行って検討した。その結果,1. 身体機能は,身長や視力などの14項目で男女間に有意差があった。2. 転倒経験者は,男性26名,女性74名,計100名であり,女性が有意(p<0.01)に多かった。また,身体機能を転倒の有無で比較すると,男性は体重と筋力,女性はバランス能力で有意差があり,いずれも転倒経験者が低値を示した。3. 調査項目間の関係を分割表分析で分析した結果,以下の項目間などに有意な関連性が見出された。即ち,自覚症状では男性は興奮状態,女性は鬱状態で転倒する傾向にあった。転倒にまつわる自己認識(若い頃から転ぶ,他人より転ぶ,普段から転ぶ)では,転ぶと認識している者の中に,日常生活で心身不調を訴えている者が目立った。また,転倒にまつわる自己認識を男女別に比較すると,転ぶと認識している男性は実際に転んだ時の傷害が重く,逆に女性は軽かった。
  以上より,高齢者の転倒は,その要因として身体機能だけではなく生活環境条件や心理的側面にも注目すべきであり,これらの条件と性別が重なって発生するものと考えられた。
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© 2000 一般社団法人 日本看護研究学会
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