抄録
大豆種實(胚)の細胞膜質を形域する物質の分離を試みたが浸出法は尚不完全であり各フラクションを純粹に分つ事は困難であつた.その結果を要約すれば次の如し.
(1) 脱脂大豆種實粉末を冷0.2%苛性曹達で短時間浸出すると種實の約17%は不溶解物として殘る(溶解物中に約2%の遊離ペクチンが存する如し).此の不溶解物は大部分は高級炭水化合物(無水ウロン酸を含む)であつて尚少量の含窒素化合物と無機質物を含む.
(2) 冷0.2%苛性曹達不溶解物を熱水又は熱05%蓚酸アムモニヤで浸出するとペクチン様物質を多量に溶解する.但し本物質は普通のペクチンとその物理化學的性質を異にする.
(3) 蓚酸アムモニヤに溶解しない部分を冷4%苛性曹達で浸出しヘミセルローズB1とヘミセルローズC2を分離した.
(4)冷4%苛性曹達不溶解物中には尚多量にPolyuronideの形で繊維素以外の細胞膜質物が存在する.
(5) リグニン及びヘミセルローズAは検出しなかつた.
(6) 大豆種實の細胞膜質中のヘミセルロズは從來考へられて居た如き單純なpara-galacto-arabanでない事を證明した.