抄録
本研究は,痴呆患者を在宅介護している家族の非死喪失,介護サポートそれに予期悲嘆の各尺度間の関係を検討した。144人の痴呆の家族介護者に健康尺度を含む4種類の質問紙を配布した。非死喪失は,「能力の喪失」,「家族のきずなの喪失」,「自己の機会の喪失」,「同一性の喪失」の4つのカテゴリーで,介護サポートは情緒的,道具的,ネガティブの3つのカテゴリーで構成された。予期悲嘆は,「嫌気と孤独」,「成就感」,「感謝」,「否認」,「後悔」,「過剰関与」,「諦め」の7因子で構成されていた。予期悲嘆との相関分析の結果は,非死喪失と介護サポートが予期悲嘆の質と強さに影響を与えることが示された。更に,「家族のきずなの喪失」と「嫌気と孤独」が介護者の健康に悪い効果をもつことが示された。著者は,予期悲嘆の適応的側面に注意を向ける必要のあること,非死喪失が予期悲嘆とは別の尺度として構成される必要があること,非死喪失及び予期悲嘆が介護負担と同様,介護者の健康に重要な影響を及ぼすこと等を論じた。