2006 年 29 巻 1 号 p. 1_67-1_71
本研究は,統合失調症患者の社会生活技能と自尊感情の因果関係を明らかにするために,地域で生活する患者61名の縦断データを用いて,社会生活技能と自尊感情の因果関係モデルを作成し,モデルのデータへの適合を検討した。結果,統合失調症患者の高い社会生活技能は自尊感情の高さを規定するが,高い自尊感情をもっていることが統合失調症患者の社会生活技能を良好にするわけではないということが示された。本研究の成果は,統合失調症患者がより良い自尊感情を得るには,社会生活技能を高めたり維持することが有効な方法の一つであるというエビデンス(evidence)を得たことであるが,今後,統合失調症患者の自尊感情が変容するプロセスについて質的な研究が必要である。