本研究の目的はベッドの高さの違いが患者に与える影響について検証することである。被験者は70歳以上の健康高齢女性19名とし,患者が昇降しやすい高さと看護師が作業しやすい高さのベッドそれぞれで移動援助を行った。測定指標は頚部後屈角度および心拍数とした。最大頚部後屈角度は看護師の作業しやすい高さに比べ,患者の昇降しやすい高さでの援助時の値が有意に大きかった(p<0.01)。心拍数は平均値および変化率ともに移動前・移動中・移動後のどの区間も有意差はなかった。しかし平均値および変化率の多重比較では,看護師の作業しやすい高さでは差がなく,患者が昇降しやすい高さのベッドでのみ,移動前の値と移動中の値との間に有意な増加が見られた(p<0.01,p<0.05)。以上より,移動援助時にベッドを看護師の作業しやすい高さに調節すると患者の頚部や心拍数への影響が少なくなるといえる。