2023 年 45 巻 5 号 p. 5_915-5_925
目的:精神科入院患者の自殺をめぐる看護師の体験について,病棟チームの組織的・文化的文脈に位置付けて明らかにする。方法:エスノグラフィーとし,2病棟でインタビューとフィールドワークを行った。結果:A病棟からは個々の看護師の体験として【驚きとショック】【自責と後悔の念】など4テーマ,病棟チームの状況として【共有されない看護師の体験】【院内で深まる孤立と劣等感】など3テーマが,B病棟からは個々の看護師の体験として【驚き】【納得のいく理由が見つからない】など5テーマ,病棟チームの状況として【看護師間で行われる情報の交換と体験の共有】など2テーマが抽出された。結論:患者の自殺は個々の看護師だけでなく病棟チームにも大きな影響を与える。個人だけでなく集団全体の問題と捉えられ,必要に応じて第三者の活用も含め支援策を講じること,日頃から病棟チーム内にあるダイナミクスを理解しておくとともに,その中での自身の行動や反応に意識的であることが必要である。