日本看護研究学会雑誌
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45 巻, 5 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 堀口 智美, 稲垣 美智子, 多崎 恵子, 浅田 優也
    2023 年 45 巻 5 号 p. 5_885-5_895
    発行日: 2023/01/20
    公開日: 2023/01/20
    [早期公開] 公開日: 2022/12/23
    ジャーナル フリー

    目的:糖尿病看護に携わる看護師が手ごたえを得る取り組みをアクションリサーチ(AR)の手法を用いて明らかにすることである。方法:ARモデルの1つであるKemmisとMcTaggartのモデルを採用した。参加者を糖尿病教育を行っている病棟にて募集し看護師5名が参加した。研究者がファシリテーターとなりARを進行し,インタビュー内容を質的帰納的に分析した。結果:手ごたえを得る取り組みは3サイクル10段階の過程で示された。ファシリテーターが進行する各リフレクションにおいて参加者の新たな姿が現れ,《同僚の努力や思いにはっとする姿》,《このままではいけないという姿》,《覚悟を決めた姿》が現れた。最終リフレクションにて《手ごたえを得る姿》に至った。結論:糖尿病看護に携わる看護師が手ごたえを得る過程において,ARの有用性が示唆され,糖尿病看護の場での共有体験の必要性とARにおけるファシリテーターの具体的な役割が示された。

  • 浅海 菜月, 安達 圭一郎, 大神 綾夏
    2023 年 45 巻 5 号 p. 5_897-5_903
    発行日: 2023/01/20
    公開日: 2023/01/20
    [早期公開] 公開日: 2022/12/23
    ジャーナル フリー

    目的:心理的安全を用いたモデルを看護師の職務場面に応用するため,看護師の心理的安全認識を測定する「日本語版チームに対する心理的安全尺度看護師用(JPSN)」を作成し,信頼性と妥当性を検討した。方法:Amy Edmondson(1999)のTeam psychological safety scale を開発者の許諾を得て翻訳した。逆翻訳と研究者間のレビューを行い暫定版を作成し,病棟看護師チームに所属する看護師を対象に無記名自記式質問紙を用いてWeb調査を行った。結果:515名を分析した。探索的因子分析にて原版同様の1因子7項目が抽出され,確認的因子分析にて良好な適合度を示した。尺度全体の信頼性係数(.787)と構成概念妥当性の検討より,信頼性と妥当性が示された。結論:JPSNは本邦の看護師に使用できることが確認された。今後,心理的安全認識と看護実践との関連性の探求が期待される。

  • 南﨑 眞綾, 土肥 眞奈, 叶谷 由佳
    2023 年 45 巻 5 号 p. 5_905-5_914
    発行日: 2023/01/20
    公開日: 2023/01/20
    [早期公開] 公開日: 2023/01/16
    ジャーナル フリー

    目的:急性期病院に入院する高齢者への身体拘束を最小限にするための看護管理の実践内容を明らかにすることを目的とした。方法:身体拘束廃止または減少に取り組んだ経験がある看護管理者10名にインタビュー調査を実施し,内容分析を行った。結果:急性期病院に入院する高齢者に身体拘束を最小限にするための看護管理の実践内容として,【身体拘束に関する組織の意志決定】,【身体拘束最小化の実現に向けたノウハウの収集と共有】,【身体拘束実施を検討するためのベースとなる看護観・倫理観の涵養】,【病棟特性を踏まえた部署単位での取り組みの推進】,【多職種複数人で身体拘束の代替案が検討できる機会の設定】等の11カテゴリーが生成された。結論:看護管理者が,倫理的文化を構築し,安全確保と尊厳保持というジレンマへの肯定的対処を促す環境をつくるために,マネジメントプロセスを展開することが必要であることが示唆された。

  • 病棟チームの組織的・文化的文脈に注目して
    上山 千恵子
    2023 年 45 巻 5 号 p. 5_915-5_925
    発行日: 2023/01/20
    公開日: 2023/01/20
    [早期公開] 公開日: 2023/01/16
    ジャーナル フリー

    目的:精神科入院患者の自殺をめぐる看護師の体験について,病棟チームの組織的・文化的文脈に位置付けて明らかにする。方法:エスノグラフィーとし,2病棟でインタビューとフィールドワークを行った。結果:A病棟からは個々の看護師の体験として【驚きとショック】【自責と後悔の念】など4テーマ,病棟チームの状況として【共有されない看護師の体験】【院内で深まる孤立と劣等感】など3テーマが,B病棟からは個々の看護師の体験として【驚き】【納得のいく理由が見つからない】など5テーマ,病棟チームの状況として【看護師間で行われる情報の交換と体験の共有】など2テーマが抽出された。結論:患者の自殺は個々の看護師だけでなく病棟チームにも大きな影響を与える。個人だけでなく集団全体の問題と捉えられ,必要に応じて第三者の活用も含め支援策を講じること,日頃から病棟チーム内にあるダイナミクスを理解しておくとともに,その中での自身の行動や反応に意識的であることが必要である。

  • 中村 史江, 山門 實
    2023 年 45 巻 5 号 p. 5_927-5_935
    発行日: 2023/01/20
    公開日: 2023/01/20
    [早期公開] 公開日: 2023/01/16
    ジャーナル フリー

    目的:看護師の勤務体制を16時間夜勤から13時間夜勤へ変更することによる,心の健康度と疲労蓄積度,酸化ストレスバランスの変化を検証した。方法:13時間夜勤体制(実施群)と16時間夜勤体制(対照群)に勤務する16名(各群8名)を対象に,実施前と3ヶ月後、1年後に,心の健康度と疲労蓄積度および酸化ストレスマーカーを調査し,終了後に質問紙調査をした。結果:心の健康度は,13時間夜勤群が実施前より有意に高く,質問紙調査にて心身の楽さなどが抽出された。酸化ストレスバランス度(BAP/d-ROM)比は,16時間夜勤群で経時的に有意に低下したが13時間夜勤群では変化しなかった。結論:13時間夜勤交代制への変更は,主観的に心の健康度が増加して仕事と生活に充実感が得られ,また身体的な疲労感の客観的指標である抗酸化力を示す酸化ストレスバランス度は,16時間夜勤群で経時的に悪化し13時間夜勤群は維持された。

  • 宮田 瑠里子, 尾﨑 伊都子, 門間 晶子
    2023 年 45 巻 5 号 p. 5_937-5_950
    発行日: 2023/01/20
    公開日: 2023/01/20
    [早期公開] 公開日: 2022/12/23
    ジャーナル フリー

    目的:紙巻きタバコを使用していた喫煙者が,加熱式タバコを習慣的に使用するようになり喫煙に関する態度・行動が変化するプロセスを明らかにし,保健指導の示唆を得ること。方法:対象者に半構造化面接を行い,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析した。データ収集期間は2019年5月〜8月であった。結果:喫煙者は常に非喫煙者との人間関係を意識していた。心置きなくタバコを吸えないもどかしさに悩まされる中,加熱式タバコに出合い,後ろめたさをごまかしながら使用する。そして加熱式タバコにより,遠慮なくタバコを生活習慣として成り立たせる術を手に入れ,喫煙本数の増加や禁煙意識の低下が起きていた。結論:タバコを吸いにくい環境であれば行動変容の機会が訪れるかもしれない喫煙者に対して,加熱式タバコが禁煙から遠ざかるという逃げ道を与えてしまう可能性やニコチン依存が強固になる可能性に留意する必要がある。

  • 髙栁 智子
    2023 年 45 巻 5 号 p. 5_951-5_958
    発行日: 2023/01/20
    公開日: 2023/01/20
    [早期公開] 公開日: 2023/01/16
    ジャーナル フリー

    目的:本研究は,ベッド・車椅子間移乗時に転倒した回復期脳卒中患者に対して,「一人での移乗を続けてよい」と判断する際の看護師の判断視点の因子構造を明らかにすることを目的とした。方法:全国の回復期リハビリテーション病棟でリーダー的役割を担っている看護師(各病棟1名)に質問紙調査を行った。分析には探索的因子分析及び確認的因子分析を用いた。結果:857施設に郵送し,有効回答は319名(有効回答率89.6%)であった。看護師の判断視点として,〈安全な移乗動作の定着〉〈再転倒予防につながる学習体験〉の2因子8項目の因子構造モデルが得られた。結論:看護師は,転倒後も一人での移乗を続けてよいか否かを,〈安全な移乗動作の定着〉〈再転倒予防につながる学習体験〉の2つの視点から判断していることが示唆された。

  • ─患者を支える家族員の異文化体験に注目して─
    隍 智子, 中尾 友美, 清水 安子
    2023 年 45 巻 5 号 p. 5_959-5_969
    発行日: 2023/01/20
    公開日: 2023/01/20
    [早期公開] 公開日: 2022/11/25
    ジャーナル フリー

    目的:外国人を含む家族における患者を支える家族員の異文化体験を明らかにする。方法:7つのデータベースを用いて文献検討を行った。結果:国内文献3件,国外文献7件が抽出された。抽出された文献の本文中から,家族内の患者が医療を受けている国とは異なる生活様式や文化を持っているがゆえに体験した内容に関する記述を23か所抽出し,それらを9カテゴリーから成る【宗教・慣習の違いによる困難な体験】【言語の違いにより生じた困難な体験】【個人的・社会的サポートに関する体験】の3テーマに分類した。結論:看護師の異文化対応力,介護に対する達成感や満足感につながる家族介護者のサポート体制の確立,文化や国籍を問わず助け合いができるコミュニティー作りの重要性が明らかとなった。外国人を含む家族における患者以外の家族員が心身の健康を維持するためには,地域を含めた看護支援策を検討していく必要性がある。

  • 稲垣 圭吾
    2023 年 45 巻 5 号 p. 5_971-5_978
    発行日: 2023/01/20
    公開日: 2023/01/20
    [早期公開] 公開日: 2022/12/23
    ジャーナル フリー

    目的:本研究では,色情報の評価方法の先行研究を調査し,現状と課題を明らかにするために文献レビューを行った。方法:医中誌WebとPubMedにおいて,「看護」「色」「客観的評価」などの用語を組み合わせて検索した。最終的に国外文献5件,国内文献23件を抽出した。結果:抽出した論文を3つに分類した。その結果,「スケールを用いた色比較方法」が最も多く17件だった。その他として,「分光測色計等の機器を使用した色比較方法」が6件,「臨床現場における色表現方法」が5件だった。結論:国内外の先行研究では,スケールを用いた色比較方法が多く報告されていた。観察環境や個人差等の影響により色情報の客観的な評価が難しい場合があるため,今後は臨床現場の環境等に影響されず,色情報を評価できる方法を検討していくことが課題である。

  • ─妥当性と信頼性の検証─
    嶋岡 征宏, 山勢 博彰, 田戸 朝美
    2023 年 45 巻 5 号 p. 5_979-5_989
    発行日: 2023/01/20
    公開日: 2023/01/20
    [早期公開] 公開日: 2022/11/25
    ジャーナル フリー
    電子付録

    目的:ICU患者の睡眠を簡便かつ的確に評価できるICU Sleep Evaluation Scale(ISES)の項目を洗練し,妥当性と信頼性を検証すること。方法:2日間以上ICUに入院した患者20名を対象に,ISESを用いて睡眠評価を行った。担当看護師は,脳波計を装着した患者を睡眠観察シートで評価し,患者は起床時に睡眠自己評価シートで評価した。両シートの項目分析を行い,項目を修正した。その後,両シートの総合点と睡眠変数間の相関分析,Cronbachのαを算出した。結果:睡眠観察シートの総合点との相関は,睡眠効率とr=.31,REMとr=.48であった。睡眠自己評価シートの総合点との相関は,睡眠効率とr=.46,N3とr=.42であった。Cronbachのαは,睡眠観察シート .71,睡眠自己評価シート .72であった。結論:ISESは自己評価が可能なICU患者の睡眠を評価できる尺度である。

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